令和5年度 第1回世田谷区議会定例会意見開陳

2015年に初めて世田谷区議会に送り出していただき2期8年、活動を進めてまいりました。たくさんのみまさまに支えられ、応援いただきましたことを心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

私は今議会で議員生活に終止符をうち、一人暮らしの母をエンパワーメントするために栃木県にUターンします。会派に与えられた8分という短い時間ではありましたが、区議会が真のジェンダー平等に根差した政策に取り組んでいくことを切に願って、最後に会派を代表し意見を申し述べました。以下全文です。

生活者ネットワーク世田谷区議団を代表し、令和5年度一般会予算他4件すべてに賛成の立場から意見を申し上げます。私たちは40年以上前から、生活に密着した様々な課題や環境問題を解決するために、区議会に議員を送り続けてきました。2期、あるいは3期で交代するというこれまでのルールは、議員を職業化・特権化せず、未だ子育て介護の多くを担う女性にとって、議会に挑戦するハードルを下げることにも寄与し、普通の主婦や若い女性が政治を道具として活用する仕組みをつくり出し、多くの女性の政治への参画の裾野を広げてきました。

私は、生活者ネットワークと出会う前は乳児院のボランティアや、コンゴ民主共和国での紛争鉱物による性的テロ問題を考える会を主宰するなど、一貫して魂の殺人と言われる性暴力の根絶と困難を抱える女性や子どものエンパワメントに向けて取り組んできました。議員になった8年間でも包括的性教育やセクシャル・リプロダクティブヘルス/ライツの推進を何度も取り上げ、世田谷区の多様性を認め合い男女共同参画と多文化推進条例にSRHRの視点がはいったこと、平和資料館と男女共同参画センターらぷらすとの連携による初めての紛争化における女性の性暴力の啓発事業が行われたこと、学校現場における性教育を進めるための専門部会が立ち上がり着実に進める体制ができたことなど希望を持ちました。私は今議会で、議員としての生活に終止符を打ち、帰省するたびに身体も心もどんどん小さくなる一人暮らしの田舎の母をエンパワーメントするために実家に帰る決断をしました。今日の意見が最後の意見となります。

今振り返れば、2020年には新型コロナウィルスの感染拡大により家庭内DV面前DVが顕在化し、区内で受けるDV相談も1.6倍になりました。国連事務総長やUN Women事務局長が女性や子どもへの暴力が急増しているとして、国際社会に対し、ジェンダーに基づく暴力という影のパンデミックに明確に終止符を打つべく努めるよう要請が相次ぎ、世界中で起こるDVが浮き彫りにもなりました。また、一斉休校により子育てが実質的に家の中に閉じ込められる事態となったことで、ワンオペで頼る先のない育児中の女性やシングルマザーからは、「子育てに必要な時間を生み出すために非正規雇用を選ばざるを得なかったなど働き方への不満」や「実家が遠く近隣に頼る人もなくもう限界」といったご相談など、「子育ては自己責任」の名の下に、これまで行政や地域資源とも繋がってこなかった多くの女性や子どもの困難さを痛感しています。

こうした問題は、夫である男性中心の経済の在り方、社会のジェンダー観が基本にあることはもうすでに知られていることです。とはいえ、日本政府は男性育児休業取得率の目標を2025年で30%と掲げていますが、直近の取得率は半分の約14%にとどまっています。少子化対策を進める上で必要な育児中の女性の支援は、地域と密着した地方自治体の重要な課題です。

私たちは、未だ家事や育児、介護といったアンペイドワークを担う女性たちの当事者として、また、毎月11日には花を持ってフラワーデモを行い「戦争反対」や女性へのあらゆる暴力を根絶するために#me too運動とも連帯し「誰も一人にしない」と声をあげ続けるとともに、私のような普通の主婦が議会に出ることで議会を身近に感じてもらい、必要となる生活者の視点で政策を提案してきました。特に、「生活」に根差した課題を調査・追及していくと、そこには必ずジェンダーの課題が隠れています。なぜなら、日本では、生活を担うのは女性であり、男性は経済・社会を担うという、性別と役割が固定化されてきたからです。ジェンダーによる差別は、多くの問題を提起してきました。性自認や同性婚、セクシャルハラスメントなどはジェンダーによって明らかになった直接的な差別です。しかし、世の中にはもっと多くの差別が根源的にみられることに意識を向けるきっかけとなったのは、障がい者や、外国人への差別などジェンダーから見えてきた多様性の尊重と無意識の偏見があります。つまり意識しないで差別したり、差別と気づくことのない多くの人によって差別されてきた歴史を改めて感じています。

また、女性活躍が主要政策にもかかわらず、女性活躍後進国から抜け出せない日本では、東京医科歯科大学など大学入試に性差別があることが判明したり、女性のいる会議は時間が長くなるという元首相の発言などは「頑張ったら女性も活躍できる」社会ではないことが露呈した事件でした。私も身近な方々から、「議員」であることによりさまざまなご相談やご意見をいただくなかで、多くの相談がジェンダー問題につながるなぁと自分自身が気づかされることが何度もあります。

昨年、「女性が日常生活または社会生活を営むにあたり、女性であることによりさまざまな困難に直面することが多い」ことが、社会的に認知され法律という形になったことは喜ばしく、ここに光をあてるためにも先の一般質問や予算特別委員会でも女性支援新法のよりよい運用に向けて取り上げさまざまに提案しました。2月1日現在、91万5000人の人口を抱える基礎自治体である世田谷区としては、検討に要する時間などありません。早期に、庁内連携を主導する旗振り役を明確にして、女性支援の計画の策定と民間団体と協働し新たな女性支援の枠組みづくりのために会議体を設置し、多岐にわたる属性や背景を持つ女性たちが支援からこぼれ落ちることがないよう包括的に支援し、真のエンパワメントにつながる体制整備をここ世田谷から確実にすすめことに期待します。SDGsのゴール5ジェンダー平等は2030年までに達成すべき目標であり、ジェンダー問題は命と人権に関わります。今、世界中が取り組んでいるSDGsの17の目標すべての課題解決にはジェンダー平等が不可欠です。区としても次期基本計画全体を貫く考え方として、この普遍的な目標を基本計画に反映し、ジェンダー主流化を着実にすすめること、首長と行政が常に人権尊重のアピールを欠かさないこと、区議会が真のジェンダー平等に根差した政策に取り組んでいくことを切に願っています。

最後に、3月31日をもって退職される職員のみなさま、長きにわたり区政に尽力くださいました。心より感謝申し上げます。そして、この場にいらっしゃるすべてのみなさまの健康と益々のご活躍を祈念申し上げまして、以上終わります。